RRS/IHCAとは

1:RRSとは?

RRSとはその名の通り、患者の変化に「早期対応」し患者の安全を守るシステムである。ほぼ同様の用語にMET: Medical Emergency Teamがあるが、METはオーストラリアなどで使用され、RRSは米国で使用されるが同じシステムを指す。一般的なRRSの起動基準を下表に示すがコードブルーとは起動閾値が低く設定されている。ある研究では院内心停止を起こした患者の66%で、6時間前に何かしらの異常所見が見られているとされ、RRSは患者の状態が少しずつ増悪していく場合に「早期に」介入し治療を行うことで、Failure to Rescue(コードブルーが必要なショックや心停止といった緊急事態)を「未然に防ぐ」ことを目的としている。このFailure to rescueは職務怠慢や不正行為によるものでなく、日々の献身的な医療の中で起こりうるものであり、原因は大きく分けて3つ(1診療プランの問題:アセスメント、治療方法、ゴール設定の問題、2:コミュニケーションエラー:患者-医療者間、医療者-医療者間、3:悪化の早期発見の遅れ)によるとされ、どの患者にも起こりうるためシステムとしての防御策が必要なのである。

 

2:RRSの内容

RRSは患者の異常の“気づき”から始まり、医師・看護師などからなるチームにより必要な治療を含めた“対応”がなされ、患者の状態によっては主治医への引き継ぎ、専門科へのコンサルト、ICUへの搬送が行われる。そして各RRS起動症例の起動状況や転帰についてデータ回収・解析が行われ、その後の医療安全に繋がるようシステムの改善などが話し合われる。これらすべてを含めてRRSである。またこれらは施設の管理職のサポートの元で運用される。

 

3:コードブルーとの違い

本邦では急変対応システムとしてコードブルー※が浸透している。一般的なコードブルーは呼吸停止や心停止などで一分一秒をあらそう緊急時に起動されるシステムであり、医療安全のためには非常に重要なシステムである。しかしコードブルーは、駆けつけた大人数の医師で指揮命令系統がうまく働かなくなることや、時間的余裕もなく多岐にわたる原因疾患を鑑別・対応しなければならないため患者を危険にさらすリスクがある。そのためコードブルーに至る前に変化を察知して患者を防ぎうる死から守るために期待されるのがRRSである。RRSとコードブルーの根本的な違いは起動基準とチームが駆けつけるまでに時間の差にあり、RRSでは起動から10分以内にチームが診察を始めることが推奨されており、そのような余裕のある状態でも気兼ねなく起動できる点がコードブルーと異なる。
※施設によって呼び名や起動基準は様々である