ご挨拶

 2008年にJSEPTIC(NPO法人 日本集中治療教育研究会)が発足され、JSEPTICの中での若手の教育育成という流れの中で、SCCM(米国集中治療医学会)が展開する集中治療の基本的なコースであるFCCS(Fundamental Critical Care Support)・PFCCS(Pediatric Fundamental Critical Care Support)を、日本各地で開催してきました。2015年にJSEPTICより分離し、より医療安全、集中治療の導入部の教育、特に多職種間連携の取り組みに力を入れたCCPAT(一般社団法人 集中治療医療安全協議会)を設立いたしました。

 集中治療医学は多職種で集学的に重症患者の治療をするものです。集中治療ではチーム医療を最高レベルで実践していく必要があります。そのためには標準的な治療と職種を越えたスタッフ間でのコミュニケーションが重要です。専従医がまだ少ない状態では標準治療も、スタッフ間のコミュニケーションも十分とはいえません。われわれは“ひとりのスーパースター”を育てるのではなく、標準治療と多職種間での共通言語を広めようと考えております。FCCS・PFCCSはこの目的に合致していました。2008年にFCCS運営委員会を発足させ、全国でコース展開を始めました。沢山のスタッフの協力のおかげで、今や初期研修医、看護師、臨床工学技士、理学療法士、薬剤師など多職種のメディカルスタッフの参加があり、標準治療と多職種間のコミュニケーションは広まりつつあります。

 一方で、集中治療室には病棟で急変して入室になる場合も少なくないです。この中にはいくら標準的治療やチーム医療を実践しても回復しない症例も多く経験します。もっと早い状態での集中治療をする必要が認識されてきました。これがRRS(Rapid Response System)の基本的考え方で、医療安全にもつながるタクティクスだと思います。院内での回避できる死亡を減少させるための教育・研究のサポートなどもできればと考えております。

 今後はこのコンセプトを基本にFCCS・PFCCSとRRSを核にしてハンズオン、講習会を展開し、情報発信していきたいと思います。

一般社団法人 集中治療医療安全協議会(CCPAT)代表理事
安宅一晃